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第9号 薬の相互作用

複数の薬を飲む場合、本来はそれぞれの薬の効果を期待して服用することになりますが、中には薬同士の相性が良かったり、悪かったりする場合があります。つまり、一方の薬が、もう一方の薬の効き目を強くしたり、あるいは弱くしたりするケースです。このような薬同士の作用を『相互作用』といいます。相互作用によって、薬の効果に影響が出るだけでなく、副作用が生じやすくなることもあります。また、相互作用は薬同士だけでなく、食品が薬の効果に影響することもあります。今回は、薬と薬、薬と食品の相互作用についてご紹介します。

1.薬の相互作用

薬の種類は数多くあり、それらの薬の組み合わせというと、無数にあります。しかし、薬の化学的な性質や体内動態といった特徴から、注意するべき組合せはある程度予測することが可能です。薬の飲み合わせに関しては、併用注意や併用禁忌として、医薬品ごとに分類されています。これらに関して簡単に補足すると、併用禁忌は飲みあわせてはいけませんという意味です。併用注意は、併用禁忌ほど厳しく制限はされていないものの、出来るだけ避けた方が良いというようなニュアンスで、薬の効きすぎや減弱、あるいは副作用の発現を注意して観察しながら治療を進めていくというものです。 さて、併用すると良くないというのは、薬同士でどのようなことが起こっているからなのかという視点から、以下にご紹介していきたいと思います。

 

1-1.薬同士がくっつく場合
薬同士が化学的な性質で結びついてしまうケースがあります。薬同士がくっついてしまうことで薬が消費されてしまい、そのぶん薬の量が減ってしまうことになります。そのため、本来期待される効果が減弱する恐れがあります。特に起こりやすいのが、鉄やマグネシウムといったミネラル成分の薬と、それらと結びつきやすい性質の薬との組み合わせで、このくっつく反応をキレートといいます。実際には次のようなケースがあります。
(例)ミノマイシンとマグミット(併用注意) ミノマイシンという抗生物質(テトラサイクリン系抗生物質)は、ミネラルととてもくっつきやすい性質があります。マグネシウム製剤であるマグミット(下剤としてよく用いられる)をミノマイシンと同時に服用すると、ミノマイシンがマグミットとくっついてしまい、そのぶんミノマイシンの効果が低下してしまいます。
 
その他のキレートが生じやすく注意するべき薬品名も載せておきます。 (その他の注意が必要な薬)ニューキノロン系抗生物質(クラビット、グレースビッドなど)とミネラル製剤(マグネシウム、カルシウム)、セフゾンと鉄分など

 

1-2.代謝による影響 ~効き目が弱くなる場合~
私たちは良かれと思って薬を飲みますが、体は薬を異物と認識しますので、体の外へ出そうとします。薬を体外へ排出しようとする時、多くの薬が体内で化学変化を起し、体外に排出しやすい状態(一般には水に溶けやすい状態)へ変化して排泄されます。このように薬を化学変換させるのが『薬物代謝酵素』です。薬物代謝酵素には複数の種類があり、薬によって、反応する薬物代謝酵素の種類は異なります。 私たちが治療薬として服用する薬の中には、この薬物代謝酵素を誘発させてしまう薬があります。こうして分泌された代謝酵素が、その酵素で分解される薬を一緒に飲むと、当然その薬の効き目は悪くなってしまいます。

(例)テグレトールとハルシオン(併用注意) てんかんや三叉神経痛など様々な用途で用いられるテグレトールは、服用によって薬物代謝酵素の一つCYP3A4を分泌させてしまいます。一方、睡眠薬のハルシオンはCYP3A4で代謝(分解)される薬です。このため、これらを併用することによって、ハルシオンが通常よりも余計に代謝されるため、ハルシオンの効き目が悪くなる恐れがあります。

その他のCYP3A4を誘導する薬、CYP3A4によって代謝される薬もそれぞれ載せておきます。これらも併用した場合、代謝される方の薬の効き目が低下する可能性があります。
(CYP3A4を分泌させる薬)フェノバール、アレビアチン、リファジンなど
(CYP3A4で代謝される薬)カルシウム拮抗薬(高血圧治療薬:アダラートなど)、プレタール、ネオーラル、プログラフ、アダラート、セララ、レビトラ、ベルソムラ、プラザキサ、イグザレルトなど

 

1-3.代謝による影響 ~効き目が強くなる場合~
薬によっては、先の例とは逆に、薬物代謝酵素の働きを抑えてしまうものがあります。そのような薬を服用すると、本来分解されるべき薬が分解されず、結果として強く効果が現れたり、副作用が起こりやすくなってしまうものがあります。
(例)イトリゾールとリポバス(併用禁忌)
抗真菌薬のイトリゾール(爪水虫治療などによく用いられる)は、先にご紹介したCYP3A4を強力に阻害、つまり薬物代謝酵素の働きを失くしてしまいます。一方、リポバス(高脂血症治療薬)は、本来CYP3A4によって代謝される薬なのですが、イトリゾールと服用すると分解されずそのまま体内に残ってしまいます。その結果、リポバスの副作用の一つ、横紋筋融解症(筋肉が溶け出す副作用)が起こりやすくなるため、併用禁忌に指定されています。

その他のCYP3A4を阻害する薬品を載せておきます。これらとCYP3A4で代謝される薬と併用すると、代謝される側の薬が効きすぎたり、副作用が起こりやすくなる可能性があります。
(CYP3A4を阻害する薬)クラリス、タガメット、エリスロシンなど

 

1-4.同一排泄経路
薬は様々な経路で排泄されることになりますが、作用の異なる薬を飲んでも、排泄経路が同じであれば、排泄が混み合うことになります。このような場合、単一で服用した場合よりも排泄が遅れてしまうため、結果として作用が強く現れてしまうことになります。その排泄経路の一つにP糖タンパク(体から毒物を排泄しようとする機構)を経由するルートがあり、P糖タンパクから排泄する薬を一緒に飲むと、それぞれの排泄が遅れてしまい、体に残りやすくなって作用が強く現れるおそれがあります。
(例)ジゴキシンとアダラート(併用注意)
強心薬のジゴキシンも高血圧治療薬のアダラートも、P糖タンパクを経由して薬が排泄されます。これらを服用すると、薬の排泄において競合するので、それぞれの排泄が遅れるために、作用が強く現れる可能性があります。特にジゴキシンは強く現れると、悪心や嘔吐といった症状(ジゴキシン中毒)が現れやすくなります。

その他のP糖タンパクで排泄される薬も以下に載せておきます。
(P糖タンパクで排泄される薬)抗がん剤、ネオーラル、ワソラン、キニジンなど

1-5.血中アルブミン
薬の体内の移動には、主に血液が利用されます。血液の中を薬が通る時、血液中のアルブミンというタンパク質とくっついたり離れたりしながら移動しています。実際に薬が効果を発揮するためには、血液から薬を必要な部位へ浸透させる必要があるわけですが、アルブミンとくっついた薬は、カサが大きいため組織へ渡る事が出来ません。組織に入り込むことが出来るのは、アルブミンとくっついていない方の薬です。このアルブミンとくっつきやすいか、そうでないかの薬ごとの性質の違いが、飲み合わせの問題として浮上してくることがあります。
(例)ワーファリンとクリノリル
ワーファリンはアルブミンとくっつきやすい性質がありますが、鎮痛剤のクリノリルはワーファリンよりももっとアルブミンとの反応性が高いです。そのため、これらを一緒に飲むと、クリノリルがアルブミンとより強くくっつく為、アルブミンとくっついていないワーファリンが血中に増えてしまいます。その結果、実際にワーファリンを飲む量よりも、クリノリルと併用することで、ワーファリンの服用量を減らすことが出来ます。ワーファリンの服用量を減らす目的で、実際にこのことを利用して処方されているケースもあります。

2.食べ物、嗜好品との影響

薬の服用は、『食前』や『食後』というように、食事を節目として設けられている場合が数多くあります。これは、単に薬を飲むタイミングとして目安になりやすいからという理由で食後とされていることもありますが、食事をとることによって薬の効果に影響する場合もあります。食事をとると、胆のうから胆汁が分泌されて栄養素である脂肪分を吸収しますが、脂溶性の高い(油の性質を持つ)薬も、食後に飲むことにより胆汁と一緒に吸収されるため、効率よく体内に吸収されます。脂溶性ビタミンであるビタミンE(ユベラなど)はその一つです。逆に、食事によって薬が分解されてしまう薬(ベネットなど)や、食事に先回りして作用する必要のある薬(ベイスンなど)を食後に服用してしまっては全く意味がなく、食前(ベネットは服用後30分飲食は控える)に服用しないといけません。
さらに、食事に対する影響だけでなく、具体的な食事の種類によっても、影響する場合があります。ここでは、それらのうち、グレープフルーツジュース、納豆、ミネラル、アルコール、タバコ(食品ではありませんが!)について、詳しく見ていきたいと思います。

 

2-1.グレープフルーツジュース
体内に入ってきた薬物を、体では懸命に体外へ出そうとして、様々な化学変化を起こして体外に出しやすい状態へもって行きます。その化学変化の一つに薬物代謝酵素が関与していることは先にご紹介いたしました。しかし、薬物代謝酵素の作用は一様ではなく、体質的に薬物代謝酵素をたくさんもっている方は、薬を分解しやすいということになりますし、元々少ししか持っていない人は、薬が分解されにくいということになりますから、薬の効きが体質によるのはこういったことも理由の一つに数えられるでしょう。
さて、ここで本題に入りますが、グレープフルーツジュースが薬の効果に影響を及ぼすのは、グレープフルーツジュースによって薬物代謝酵素の一つであるCYP3A4が壊されてしまうからです。つまり、先にご紹介したCYP3A4で代謝される薬をグレープフルーツジュースと一緒に飲むと、体内のCYP3A4が減ってしまう事になり、その結果、薬が充分に分解されず残るため、薬が効きすぎたり、あるいは副作用の起こる可能性が高くなります(ただし、CYP3A4の作用は個人によって異なり、そのためグレープフルーツジュースによる影響も個人によって大きくなります)。なお、グレープフルーツジュースがダメだからといって、全てのかんきつ類が悪いわけでなく、ミカンやレモンは問題ありません。

2-2.納豆

神戸の調剤薬局の納豆の説明

納豆はワーファリンという薬と影響することがあります。ワーファリンは血栓という血液の塊が出来ないようにする薬で、ビタミンKという血液の固めるのに必要な成分を抑えて、サラサラの状態を保ちます。この血液の固まりやすさは、患者個々によって大きく差がありますので、ワーファリンの服用量もその人にあった量が用いられます。
納豆はビタミンKを多く含みますので、ワーファリン服用中の人が納豆を食べると、ワーファリンが納豆中のビタミンKとも反応してしまい、そのためワーファリンの効き目が悪くなってしまいます。このように、もともとワーファリンは個人によっても服用量が異なる上に、食べるものによっても影響することがあり、さらに他の薬物との相互作用も受けやすい為、ワーファリンは量の調節が非常に重要で、かつ難しい薬の一つになります(ワーファリンの量が適切かどうかは血液検査によって判別することが可能です)。納豆以外にもビタミンKを多く含む食品があり、クロレラ、青汁などにも注意が必要です。

2-3.ミネラル

神戸の調剤薬局のミネラルの説明

薬の中には、ミネラルとくっつきやすい性質の薬があります。先にご紹介した相互作用の【ミノマイシンとマグミット】でも出てきましたが、同じ理由でミノマイシンはミネラルを多く含む牛乳やヨーグルトなどとも要注意です。一般的には、服用時間を2時間以上ずらせば問題ありません。

2-4.アルコール

神戸の調剤薬局のアルコールの説明

アルコールは中枢(脳)のはたらきを低下させる作用があり ます。お酒を飲みすぎると眠たくなるのは、一つにこういう理 由があります。薬の中には、中枢のはたらきを抑える睡眠薬や精神安定剤などがありますが、これらの薬をアルコールと一緒に飲むと作用が強く現れることがありますので、ほとんどの中枢抑制薬がアルコールとの併用に注意するよう記載があります(ほとんどの薬で併用注意に分類されています)。 アルコールは、体の中で分解され、アセトアルデヒド、酢酸と化学変化を起こして、体外へ排出されます。その過程で生じるアセトアルデヒドは二日酔いの時の頭痛や嫌な臭いの原因物質として知られています。実は薬の中には、副次的な作用としてアルコールの分解を妨げて、アセトアルデヒドが残ってしまう薬があります。ピロリ除菌(二次除菌)や、抗原虫薬として用いられるフラジールという薬がそうで、この薬の服薬中にアルコールを飲むと、アセトアルデヒドが分解されず体の中に残り、その結果二日酔いのような状態が引き起こされてしまいます。そのため、服用中はもちろん、服用後も1週間はアルコールの摂取を控えておいた方が無難です。ちなみにですが、このような作用を利用して、アルコール依存症治療薬として用いられている薬もあります。

2-5.タバコ

神戸の調剤薬局のタバコの説明

タバコはそれそのものが体に良くなく、呼吸器の疾患(肺がん、喘息、COPD…)だけでなく、消化器疾患(胃潰瘍、胃がん、大腸癌…)、循環器疾患(動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中…)のほとんどが、喫煙によりそのリスクが上昇します。
薬物療法とタバコとの関係を見ていくと、タバコによって、薬を分解する薬物代謝酵素のCYP1A2を分泌させます。つまり、本来CYP1A2で分解される薬は、タバコを吸う事によってさらに分解され、効き目が悪くなってしまいます。CYP1A2で分解される薬の中にはテオドールがあり、テオドールは気管支拡張薬として用いられます。呼吸器疾患を治療中の方が喫煙するのは、それそのものが治療に良くないばかりか、薬の効きも悪くしてしまっているという事になります(もともとテオドールは、量が少ないと効き目が得られず、多いと副作用が起こりやすいという特徴があります。このため、喫煙によってさらに調整が難しくなります)。CYP1A2で代謝される薬を以下に載せておきます。
(CYP1A2で代謝されるその他の薬)ジプレキサ、テルネリンなど

3.まとめ

私たちは、「病気を治したい」、「悪化しないでおきたい」という気持ちから、薬を利用します。しかし、体はそんなこととは無関係に、薬同士の性質から起こる反応を止めようとはせず、淡々と異物である薬を分解し体外へ排出しようとします。薬の飲み合わせに関しても、私たちが意図するように体が反応するのではなく、あくまで淡々と起こるべき反応が起こっているにすぎません。このような体本来の仕組みを変えられない以上、そのことを理解した上で対策をとっていく必要があります。そのような中で、飲み合わせのチェックを行う事や、そしてさらに、飲み合わせが悪い場合の対応策などを通して、皆様にとってより良い薬物療法のお手伝いをすることが、私たち調剤薬局で勤める薬剤師の使命だと考えております。

初刊 2001/12
更新 2018/07


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