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第10号 高血圧

寒くなってくると、何かと体調を崩しやすくなってしまいます。2018年の夏は非常に暑い日が続き(その上、9月は台風や大雨で大変でした)、冬の時期も神戸地域は例年よりも暖冬傾向とのことですが、それでも冷え込んでくると身に沁みてしまうものです。

さて、寒くなってきて、体に変化を及ぼすものの一つに血圧があります。一年の中でも、冬場は血圧が高くなる季節で、また家の中にいても、部屋ごとに温度差が大きいと、移動の際に血圧が急上昇することもあり注意が必要です。今回は、血圧について詳しく見ていくことにしましょう。

1.高血圧とは?

『高血圧』という言葉はよく耳にします。血圧が高いということを表わしているのですが、この『血圧』についてもう少し詳しくみていくことにしましょう。

 

1-1.血圧って何?
血圧とは、血液が血管内を流れるときに、血管壁を押し広げる圧力のことです。血圧は、心臓がポンプのように血液を送り出すことによって発生し、心臓の収縮や拡張に伴い、上がったり下がったりしています。上の血圧・下の血圧とよくいわれますが、血圧には2つの値があり、上の血圧は収縮期血圧(最高血圧)と呼ばれ、下の血圧は拡張期血圧(最低血圧)と呼ばれています。収縮期血圧(最高血圧)は、心臓が収縮して血液を送り出したときに動脈壁にあたえる圧力のことで、拡張期血圧(最低血圧)は、心臓が拡張して血液が心臓に戻ってくるときに動脈壁にあたえる圧力のことです。 血圧は血管を押す圧力のことですから、血管が狭いほど血管壁にかかる圧力は大きくなり、また、血液量が多いほど血管壁にかかる圧力が大きくなってしまいます。そのため、血圧を下げるには、血管を広げて血管の抵抗を減らすこと、血液量を減らすことが必要になってきます。

 

1-2. 1日の中での血圧
血圧は1日の中でもリズムがあり、これを日内変動といいます。全般的な傾向として、起床時から日中にかけてヒトが活動的になるに従い血圧は上昇し、夕方から夜にかけて低下します。
その他、日常生活の様々な状況において血圧は影響し、食事、気温、膀胱におしっこが溜まった状態、緊張してドキドキする、こうしたことでも血圧は変動します。このため、後述いたしますが、血圧の測定は決まった時間に、同じような状態で測定することが大切です。

 

1-3.血圧の測定方法
血圧は高くても自覚症状として現れることがほとんどありません。そのため、血圧値がどのくらいなのかは測ってみないと分からない場合が大半です。また、病院では緊張して普段よりも血圧が高く出ることがあり(白衣高血圧)、逆に普段は血圧が高いのに病院では低く出る(仮面高血圧)こともあり、最近では自宅での血圧値(家庭血圧)が、医師の診察においても重要視されています。その他、仕事中など昼間に血圧があがる方(昼間高血圧 ※職場や家庭などのストレス状況下である場合が多く、ストレス下高血圧とも言われる)もいらっしゃいます。さらに、高血圧の中でも、明け方~早朝にかけて血圧が上がる『早朝高血圧』は、自宅で測定するしか確認の方法がありません。自宅での血圧測定は早朝高血圧のチェックという意味においても大切な意味合いを含んでいます。以下に測定タイミングや測定方法を紹介いたします。
◇朝・晩それぞれ少なくとも1回ずつ、できれば毎日測定しましょう。1機会当り原則2回測定し、その平均値をその機会の血圧値とします。1機会1回のみ測定した場合は、その時の値を血圧値とします。
・朝:起床後1時間以内に、座った姿勢で1~2分間安静にした後に測定してください。薬を飲んだり朝食を食べるのは測定後にしてください。排尿は測定前にすませておきましょう。
・晩:就寝前に、座った姿勢で1~2分間安静にした後に測定してください。
◇測定部位は、上腕が適しています。測定時は、上腕と心臓とが同じ高さであることがのぞましい。
血圧測定方法には他にも、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)というものもあり、これは30分や1時間など定期的に血圧を自動で測定する装置です。終日に渡って血圧をチェックするので、先の早朝高血圧、白衣高血圧、仮面高血圧、職場高血圧などの確認をすることも可能です。24時間自由行動下血圧測定(ABPM)の使用については医療機関にお問合せ下さい。
血圧は季節によっても変動があり、一般的に夏場は低くなり、冬場は高くなる傾向があります。これには、人間の恒常性が関係しており、夏場は体の熱を体外へ放出する為に血管を拡張させる一方、冬場は体から熱が逃げないように血管を収縮するためだと考えられています。ちなみに、一年を通じて、冬場の方が血圧の事故は多く発生しています。

 

1-4.血圧の値について
では血圧がどのくらいの数値であれば、正常なのでしょうか?成人における血圧値の分類表を以下の表に示しております。

 

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正常な血圧(正常域血圧)にも3段階が設けられているのですが、これには以下のような経緯があります。もともと血圧が高いほど心筋梗塞などの合併症が起こりやすく、低いほどそのリスクが低いことは解っていました。では、どのくらいの値が良いのかということについて、ガイドラインにより示されました。『至適高血圧』は合併症のリスクが極めて低く推奨される値です。そこから順に、『正常血圧』、『正常高値血圧』となり、これらは将来的に高血圧にならないようにといった意味合いも含まれるでしょう。正常域血圧に当てはまらない場合は、高血圧となりますが、その重症度に応じてⅠ度~Ⅲ度、(孤立性)収縮期高血圧(高齢者に多い)と分類されています。

血圧値の基準については、診察室での血圧で、上が140、下が90、このどちらかでも上回ると、高血圧症と診断されます。ただ、診察室だけでは必ずしも正しい測定が出来ない具合が少なくなく、家庭血圧と診察室血圧に差が合った場合には家庭血圧が優先されます。また、24時間自由行動下血圧も高血圧診断の基準として用いられます。以下はその際の基準表です。

 

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2.血圧治療

血圧のことが分かったところで、なぜ高血圧が良くないのかということを、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

 

2-1.高血圧の合併症

神戸の調剤薬局の高血圧の合併症の説明

高血圧の自覚症状は、頭痛や後頭部が重いといった症状もありますが、大部分は無症状です。症状がないからと言って、血圧を高いまま放っておくと、脳卒中や心筋梗塞など重大な合併症を将来的に引き起こす可能性がとても高くなることが分かっています。それが降圧療法を実施することによって、脳卒中の発生率を35~40%、心筋梗塞を20~25%、心不全の発症を50%以上低下させることが示されています。

血圧が高いと血管に負荷がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす主要な原因の一つですが、動脈硬化は血圧だけでなく、血糖値やコレステロール値の高い方、喫煙をされている方(リスク因子)ではさらに進行しやすくなりますので、通常の基準値よりも厳格な血圧値が求められます。このように、高血圧はリスク因子の数によっても、目標値は異なってきます(『2-3.治療目標』に記載)。

2-2.生活習慣の是正
高血圧は遺伝的な要因によりなりやすいということが示されていますが、これには、親子が同じような食生活を送ってきたことによることも少なくないと思います。つまり、食生活をはじめとした日常の生活習慣も血圧には大きく影響しています。

神戸の調剤薬局の生活習慣の是正の説明

◇ 食塩:日本人は総じて食塩を好む食生活で、1日平均11~12g摂取しているといわれています。目標は1日10g未満ですが、高血圧の治療中の方は、1日6g未満が求められています。総じて、日本人は体質的に食塩感受性の高い方が多いと言われています。食塩感受性というのは、食塩を摂ると血圧がスッと上がってしまう方で、そのため、減塩により速やかに血圧が下がる方は少なくありません。
◇ 運動:有酸素運動は降圧効果だけでなく、内臓脂肪の減少による脂質代謝の改善、インスリンの感受性の改善が期待できる。
◇ 野菜:野菜に多く含まれるカリウムには、血圧を下げる働きがあります(但し、腎疾患などでカリウム制限を受けている方はご注意下さい)。
◇ 喫煙により血管が収縮し、一時的に血圧が上がるだけでなく、喫煙により発生した活性酸素によって動脈硬化の原因となります。

 

神戸の調剤薬局の生活習慣の是正の説明また、冒頭でも触れましたが、温度差が大きい室内の移動が、急激な血圧の上昇につながる恐れがあります(ヒートショック)。特に冬場でよく冷え込んだ日は、風呂場の脱衣場と浴室、あるいは、暖房の効いた部屋からトイレに行った時などは気温差が大きく注意が必要です。脱衣所を暖房などで暖めておくなど、室温がある程度均一になるようにしておくと良いでしょう。

2-3.治療目標
血圧の基準値については、『1-4.血圧の値について』で触れましたが、患者さんの年齢や、治療中の疾患がある場合の、それぞれの目標値がガイドラインにより示されています。つまり、糖尿病や慢性の腎臓病(CKD)の方は、血圧をより低く推移することが求められています。
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※忍容性とは、「薬を飲んでも副作用が起きなければ、薬を飲むことに体が耐える事が出来れば」というような意味です。

3.薬物療法

血圧が高い場合には食生活をはじめとした生活習慣を見直す必要が出てくるわけですが、それでも血圧が下がらない場合は、薬を利用します。薬の作用は主に、血管を拡張させ、血管での抵抗を低下させる薬か、あるいは血液量を減らすことによって血圧を低下させます。高血圧のガイドラインでは、高血圧患者が第一選択薬として使用する薬は、カルシウム拮抗薬、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿剤の4剤であると記されています。治療はこれらの薬から1種類を選んで治療しますが、目標に到達しない時は、他の種類の降圧剤を併用することで降圧効果が高まることが分かっています。ここでは、それらの4種類と、その他の降圧剤について触れたいと思います。

 

3-1.カルシウム拮抗薬
カルシウム拮抗薬は血管を拡張させて、血圧を低下させる薬です。血管が拡張したり収縮するのに、カルシウムイオンが関わっており、カルシウム拮抗薬はこのカルシウムの動きを制御することによって、血管を拡張させます。(カルシウム拮抗薬は、『カルシウム』という名前ですが、骨の増強や減弱には影響しません)降圧効果は比較的強力で、他疾患を治療されている方や高齢者でも適応になることが多い。

カルシウム拮抗薬には、服用中にグレープフルーツジュースを飲むと作用が強く現れるおそれのある薬があります。降圧剤は長期にわたって服用するケースが多いため、グレープフルーツジュースを毎日飲む習慣のある方は避けておいた方が無難でしょう(すべてのかんきつ類がダメなわけではなくではなく、オレンジ、温州みかん、レモン、夏みかん、かぼすなどは問題ありません)

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3-2.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
体には、血圧を上げようとするシステムと、血圧を下げようとするシステ ムと両方が備わっています。このうち、血圧を上げようとするシステムの一つがレニン-アンジオテンシン系で、そこで分泌する強力な昇圧物質あるアンジオテンシンⅡが関係しています。アンジオテンシンⅡは、その受容体とくっつく事で血圧上昇作用を現します。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、アンジオテンシンⅡが受容体とくっつかないようにブロックして、血圧上昇を抑えます。

アンジオテンシンⅡは、血圧を上げる作用だけでなく、心臓や腎臓に悪影響を及ぼすことも知られています。このため、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬によって、アンジオテンシンⅡのはたらきを抑えると、心臓や腎臓にもよい「臓器保護作用」も期待できます。

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3-3.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、強力な昇圧物質であるアンジオテンシンⅡの産生する酵素のはたらきを阻害して降圧作用を示します。
効果はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬と同様で、降圧作用と臓器保護作用を示します。 この薬の特徴的な副作用として、空咳(乾いた咳)が起こることがあります。しかし、咳の誘発が、高齢者の誤嚥性肺炎の防止につながることも注目されています。
 
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3-4.利尿剤
利尿剤は血液量を減らす(尿として逃がす)薬です。利尿剤にはいくつか種類がありますが、ここではサイアザイド利尿薬、サイアザイド類似利尿薬について触れたいと思います。 サイアザイド系利尿剤は、ナトリウムを尿へ排出する作用ですが、その際、ナトリウムと一緒に水分も排出されることで利尿効果を発揮します。そのため、食塩感受性の高い方は、効果が得られやすいという特徴があります。また、服用量は少量で効果が得られることが多く、利尿効果もそれほど高くありません。副作用として、糖・脂質代謝に悪影響を与えたり、尿酸値が上昇する恐れがありますが、少量を用いる場合はこれらのリスクも低下します。
 
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3-5.その他の降圧剤
降圧剤の第一選択薬ではありませんが、他疾患を合併されている方には、良い適応となるケースも有ります。以下にご紹介したいと思います。

◇β遮断薬
 血圧を上げるシステムの一つ『交感神経系』を抑えて、血圧を下げます。交感神経は、分かりやすく言えば、心臓がドキドキするようにはたらく神経です。そのため、狭心症や頻脈の方が良い適応となる場合があります。
◇α遮断薬
 血管のα受容体を遮断して、血管を収縮させないように作用します。α受容体は前立腺や尿道にもあり、排尿障害の治療薬として用いられる場合もあります。また、早朝高血圧を抑える目的で、眠前に服用する場合もあります。
◇直接的レニン阻害薬
 アンジオテシンⅡの前駆物質がアンジオテンシンⅠですが、アンジオテンシンⅠは、レニンの働きによって産生されます。このレニンの働きを抑えるのが直接的レニン阻害薬です。レニン-アンジオテンシン系を抑えたいが、ARBやACE阻害剤が副作用などで用いられない場合に使用されます。
◇中枢性交感神経抑制薬(α2作動薬)
延髄のα2受容体を刺激し、交感神経系を抑制することにより降圧効果を発揮します。中でも、アルドメット(成分名:メチルドパ)は、妊娠20週未満の妊娠高血圧に対する第一選択薬とされています。

先に述べましたように、1種類の降圧剤で十分な効果が得られなかった場合は、作用の異なる降圧剤を併用すると降圧効果が高まることが知られています。このようなことから、2種類の降圧剤の成分が1錠に配合された配合剤も用いられることが多くなっており、患者様の服用の簡便さ、高い治療効果が得られるようになってきました。 

4.まとめ

血圧が高いからと言って、その影響がすぐに現れるというものではありません。しかし、血圧を高いまま放っておくと、その影響はジワジワと現れ、心筋梗塞や脳梗塞といった合併症のリスクは確実に高まります。仮に血圧が高くても、生活習慣の是正や服薬により、血圧を正常に推移すれば、これらのリスクが低下することも明らかとなっています。かつて日本では「人生50年」と言われていましたが、現在はもっと寿命が延びており、その理由の一つが『血圧の薬の開発』にあるのではないかとも言われています。このようなことから、普段から血圧に関心を持つこと、安定した血圧を維持することを心掛けるようにしましょう。


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